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漢方閑話⑤ 足の裏のビリビリ感
「漢方閑話」は『富士ニュース』に投稿しているコラムです。
こちらでは過去に投稿したものを転載します。
今回は2016年11月に投稿された漢方閑話をご紹介します。
足の裏のビリビリ感
◇60代の女性はこの夏の暑さで冷房に当たり足首を冷やしました。足の裏を押さえるとビリビリとしびれた感じがする。足の裏はこわばって硬く歩くとあたかも砂利の上を素足で歩くような感じがします。またかかとから足の裏が棒のように感ずることもあり、それはかかとから上にアキレス腱を通って下肢から大腿部にまで及び痛みを伴うこともあります。手や足は冷えやすく昔はしもやけが出来ることもありました。足が冷えるからと言ってこたつに入って足を温めてやりますとかえってそれが悪く足の裏は一層硬くなり痛みが出ます。夜中に足首が締め付けられるような感じがして目覚めることもあります。寝つきはよく腰や膝には問題はありません。胃が弱く胸やけやつかえた感じがして右季肋部にこわばりや痞えを感じます。便通は悪くはないが硬め、食欲はあまりなく体重は43kg、身長は153cm。小便の出が悪く時にむくむ時もあります。病医院を受診し「むずむず脚症候群」ではないかと指摘され中枢神経薬を処方されますがそれを飲むとめまいがして服薬をやめてしまったと言います。
◇足の裏にはかかとの骨(踵骨)をはじめ何種類かの骨が集まっていますがその骨の周りに筋、肉、血管、靭帯などが取り巻いています。また足の裏からは陰経の経絡の腎、肝、脾経絡が起こっています。それらは足背を通って指の末端に至る陽経の経絡の胃、胆、膀胱の経絡と表裏をなしています。腎、肝、脾が失調すると表にある膀胱、胆、胃の失調として症状が現れます。ヒトが痛みやしびれ、重だるさの症状に襲われた時古人はそれを痹证(ひしょう)と呼んでいます。
◇今この人はそのような症状が足の裏に起きているのですから足痹という漢方の病名に当たるかもしれません。足痹は肝、腎の衰え、風、寒、湿、熱の邪に襲われたり、怪我、骨折、疲労などにより肌肉や筋骨関節などの気血の不足や滞り、経絡の不通などによって痛み、しびれ、重だるさ、腫脹、活動制限が起こると考えられています。肝腎の精気や血が不足し足の裏を栄養できなくなった時この人の足の裏は相対的に内熱を帯び温めてやればよいかと思えばかえって悪化し、肝腎の精血不足は一番栄養される真夜中に病状を悪化させ、肝の弱まりは支配する季肋部に及び脇下痞硬を起こしました。肝腎を補い肝気を疏泄しますと足痹は改善しました。