お知らせ
漢方閑話㉚ 口腔扁平苔癬
「漢方閑話」は『富士ニュース』に投稿しているコラムです。
こちらでは過去に投稿したものを転載します。
今回は2019年2月に投稿された漢方閑話をご紹介します。
◇50代の女性は扁平苔癬だと言い、口の中に白いところがあり歯磨きの時にブラシがそこに当たって痛いと言って訪れました。歯科では「磨きすぎ」と指摘され、歯の奥歯の右側周辺が白くなり赤くただれて痛い。何かがそこに当たる感じがすると言い、うがい薬を処方されます。さらに歯科から総合病院の口腔外科を紹介され「口の奥の左側に変形細胞がある」と言われ病理検査に回されます。結果は「がんの可能性の5段階評価のうち2番目に当たる」と言われます。逆流性の食道炎がありゲップ、おならがよく出ます。子供の頃から便秘があり腸が長いと言われ他の総合病院で二種類の下剤と胃薬が処方されています。ガスが出て便通があればお腹の張りはしばらく良いもののすぐ元通りになってしまいます。
◇扁平苔癬は口腔のほかに皮膚にも発症する場合もあり、以前高齢の男性で手背に発症しはげしい痒みに苦しむ方にお会いしたことがあります。このたびは扁平苔癬と言って訪れたもののうち口腔扁平苔癬と言われるものと思われました。似たような病症に口腔白板症といわれるものもあり癌化することで知られ、口腔外科ではこの方面も考慮して病理検査に回されたものと思います。
◇口腔内での炎症、逆流性胃炎、長い間の便秘症は口腔から食道、胃、小腸、大腸を経て肛門までの下降経路が順調ではないために大腸での便秘による乾燥と熱気の過剰、津液不足による逆気が口腔で病症を起こし紅斑、糜爛、潰瘍などとなって現れているとも考えられます。大腸で過熱した乾燥の気の糞塊を排泄し逆流した燥熱を除くことが口腔内に発症した紅斑、糜爛、潰瘍を解消する手立てにならないかと考えました。幸いなことに病院で2種類の便秘薬が処方されてきましたが便秘の解消が口腔内の病症の解消に役立っていないことが伺えます。口腔から大腸に至る燥熱の気を清(さま)し解毒し失われた津液を回復することが役立つのではないかと思われます。漢方では燥熱による大過を陽明経の胃、大腸の病症と考えその元の糞便を除き津液の回復を図ってきました。本人に日中は会社で事務仕事に従事し夜は飲食店で皿洗いのダブルワークの環境にあります。そのような物理的な環境に加えて精神的な疲労が重なり病症を起こしたことも考えられます。口腔における熱毒や瘀血,湿熱を除くことが改善の道と考えられます。