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漢方閑話㉙ めまい

「漢方閑話」は『富士ニュース』に投稿しているコラムです。
こちらでは過去に投稿したものを転載します。
今回は2018年12月に投稿された漢方閑話をご紹介します。

◇60代の女性はめまいがすると言って来店されました。頭を動かすとめまいがしてつらいと言います。耳石が動きましたか?と話しますと医師もそのようなことを話されたと言います。ヒトの耳は外耳、中耳、内耳から成り立っています。内耳は前庭・三半規管と蝸牛(かぎゅう)より成り立っています。三半規管につながる前庭には耳石が付着していて三半規管にはリンパ液が満たされ頭部の回転運動により流れが生じ、センサーにより頭部の動きが脳に伝達されています。耳石が前庭から三半規管に脱落してめまいを発生させると考えられています。
◇解剖学の進んでいない古代では漢方では陰陽・水火・気血で人体の状態を説明して来ました。木々が風にそよぐのを見て揺れている、ふるえている、ぐるぐる回るなどの動きを風によるものと考えてきました。木、風に似た作用をする臓腑として肝胆を関連づけて病態・生理を説明してきました。ストレスや悩み、怒りなどによって気分が鬱滞しますと火を生じ肝胆の火となって燃え上がり激しい頭痛やめまい耳鳴り、夢が多い、不眠などを生じます。風火によるめまいですから風を熄(おさめ)火を清(しずめ)ます。人体は陰陽によって成り立ち、津(しん)、血、精などの陰分が蓄えられ体力の消耗や心労などによって陰分が不足しますと陰陽のバランスが崩れ陽気が亢進し、めまい、イライラ、不眠、夢が多い、盗汗、手足がほてるなどの症状が出ます。陰分を補い陰陽のバランスを調えます。心労によって心気が弱り血を生じず、頼みの脾胃も疲れて脳を養えずめまいや動悸、息切れがして疲れ食欲もなく顔色もさえず不眠などの場合には心脾の衰えを補います。胃腸が弱くやる気もない、寝てばかりいるなどの時には気力・体力を益します。腎の精力が衰えめまい、耳鳴り精神的な衰え、記憶減退、足腰の弱り、痴呆などの場合は腎精を補い髄の海と言われる脳髄を補って体を温めめまいを除きます。
◇来店された女性はめまいに苦しみ胃腸が弱く、胃がむかむかして嘔吐する。舌を見せていただくと白い苔が一面にびっしりついています。これは脾胃が弱いために脾気が上らず痰が溜まりそれが上逆しめまい、嘔吐を発生させた原因だと思われました。脾胃を補い痰濁を除き、痰を上逆させた風邪を除きますと1、2服でめまいは解消したとのことです。

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