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漢方閑話⑨ 脂漏性皮膚炎の再発

「漢方閑話」は『富士ニュース』に投稿しているコラムです。
こちらでは過去に投稿したものを転載します。
今回は2017年に投稿された漢方閑話をご紹介します。

◇60代の男性は脂漏性皮膚炎で数年来その痒みに悩んできました。皮膚科では抗アレルギー剤、ビタミン剤、抗真菌剤、副腎皮質ホルモンのローション剤が処方されてきました。舌を見せていただくと舌苔は黄色で舌質は紅く小便は黄色、大便は順調です。尿酸値が高く、めまいがして皮膚科のほか内科、耳鼻科にも通院していました。これらの条件から体内に血熱、湿熱、熱毒があると考えこれら湿疹3兄弟を清熱涼血、利湿解毒し奏功を得ました。
◇そして4年後また痒くなったと言って前回の処方を求められました。しかし体質が変わったのか今度は効果がありません。前回用いた薬は炎症を鎮めるためにその性味は苦くて寒(かん)、冷たい性質の薬でした。漢方では熱はこれを寒(かん)し、寒はこれを熱すという原則があります。脂漏性皮膚炎は、毛包に開孔した毛脂腺から分泌する皮脂が分泌過多となり湿熱がこもりストレスや細菌感染などの原因により発症すると考えられています。皮脂腺が多く集まったところを脂漏部位と呼び顔面、頭部の髪際、前額、鼻間、前胸部、肩甲間部などがあります。皮脂があふれて毛包が詰まればニキビや酒さとなり常在菌が繁殖し紅斑や落屑(ふけ)を生じ脂漏性皮膚炎を起こします。頭髪など脂漏部位に湿熱が上蒸しているのです。そのために清熱涼血、利湿解毒したのになぜ改善しないのか?その後の話で本人は喘息があり内科や耳鼻科を受診していました。そこでは漢方で喘息などによく使われる処方が処方されていました。ヒトが風寒の邪に破られ腹には水の滞りがある時に冷えた腹を温め風寒の邪を除くのに優れた処方ですが内容は辛くて温める熱薬でした。
◇炎症で熱邪があるのに熱を熱するのは誤りです。また家庭的な問題が持ち上がり他県に嫁いだ娘さんと孫達の養育のための応援に家を空けていました。娘や孫たちの将来を案じご両親の心配は如何ばかりか?皮膚は内臓の鏡と言われます。娘に対する心配は心を化熱し、深い悲しみは肺を傷つけ、物思いは脾胃を、恐は腎を傷つけます。当時60代であった彼もすでに70代、老化の域に達しています。喘息のために歯科治療中に発作が起きたらと心配もしています。腎気を補い湿熱上蒸を清熱除湿、滋陰降火、斂肺納気し治喘しますと痒み、喘息は収まり歯科治療も無事受けられたとの便りをいただきました。

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