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漢方閑話⑩ 発熱、悪寒、咳嗽

「漢方閑話」は『富士ニュース』に投稿しているコラムです。
こちらでは過去に投稿したものを転載します。
今回は2017年に投稿された漢方閑話をご紹介します。

◇50代の男性は正月を控えた年末に37度から8度の発熱、悪寒、咳嗽で苦しんでいました。発症から10日。2か所の診療所を受診し、「インフルエンザではない。」「かぜ」と診断されています。前頭部がボーとしている、黄色い鼻汁が出てドローっとした痰が出る。しゃべり出すと咳が止まらない。朝になると発熱し今朝も38度1分あった。悪寒がして厚着をしているので汗をかく。朝方10時から昼2時ごろになると楽になる。便通はよく小便は少し黄色です。体重は85kg、身長は180cm。他に病気はありません。
◇仕事が忙しく身体が疲れたところへ風寒の邪気に破れたのだと思われます。発症して10日以上も経つのにまだ悪寒がしているというのはまだ発汗、解肌の治療を経ていないことも考えられました。漢方では風、寒の外感の邪気に破られ悪寒や悪風がしたとき先ず皮表の邪気を汗して取り除くことが第一の治療法だと考えられています。ヒトの体表面には経脈が分散し衛営(えいえ)の気がめぐっています。衛気(えき)は体表面をめぐりヒトが風寒の邪気に侵されないように防御し、身体を温め、気血を推動し、皮毛を栄養し元気が漏れないように固摂し、津液を蓄える膀胱の気化作用を行っています。衛気が破られると風寒の邪気は営気を阻害し血が熱を持ちのぼせ頭がボーッとします。午前10時から午後2時は侵された太陽の気が盛んとなり諸症状が緩解する時間帯です。衛気を支える肺気は鬱滞しますと気を宣散粛降できず逆流し咳嗽を生じます。肺が宣散粛降し腎気がこれを納気し呼吸作用が行われます。肺は非常に繊細な内臓です。風、寒、湿、熱、燥、火などの六気のいずれが過不足しても咳嗽や痰、むくみ、鼻づまり、くしゃみなどの症状を発症します。病症は風寒の邪によって衛気が封じ込められ悪寒、発熱し、肺気の鬱滞により熱がこもり痰を生じその痰は熱邪に焦がされて黄色くドロドロしています。肺や脾胃に溜まった熱痰を取り除き肺気が順調に粛降することが大事です。もし悪寒や悪風、咳嗽が除かれなければ服薬方法は一日3回とは言わず4回でも5回でも回数を増やし悪寒が汗して除かれるように服薬することが大切でその汗はしっとりと水の流れるような汗をかかしてはならないのです。幸いに肺気を清熱去痰粛降止嗽しますと翌日には平熱となり諸症状は除かれました。

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