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漢方閑話㉟ 胃に空気が・・・

「漢方閑話」は『富士ニュース』に投稿しているコラムです。
こちらでは過去に投稿したものを転載します。
今回は2019年7月に投稿された漢方閑話をご紹介します。

◇70代の女性が胃に空気がたまっている感じがすると訴えて来店されました。病院で胃カメラの検査をしたら「胃の入り口のしまりがなくなっている」といわれたそうです。ゲップやおならが出ると気持ちが良い。「呼吸がうまく吸えない。」「胃が膨らんだ気がすると動悸がし始める。」医師に訴えますと「胃と心臓は関係がない。」と言われたと言います。ゲップが出るまで胃が痛い。動悸がするのが苦痛で薬局の薬を飲んでいます。睡眠はよく便通は便秘だったり下痢したりする。舌には薄い白い苔がついていて割れ目(裂門)があります。精神的な苦痛も特にはなさそうです。日常生活の中で神経を使い脾の機能が衰えて胃気が滞り上逆し「空気がたまっている」と感じさせているのだと思われます。
◇漢方では胃腸機能を脾胃の機能と考えています。飲食物が胃に入ると胃でこなされた栄養物の材料である水穀の精微は脾に送られ脾はそのエッセンスである精微を肺に向かって上輸します。肺はそれを全身に散布します。胃で消化されなかった食物の糟粕は大腸に送られ糞便として体外に排泄されます。水穀の精微が脾によって上にある肺に送られる上行性の作用に対して胃は大腸への下降性の作用によって上下のバランスを取っています。今、気の滞りによって脾気は上らず、胃気は下らず上逆しますと心下が痞え,おくびが出てむかつきます。ゲップが出、放屁すると気が放出されて気分は楽になります。治療は脾の気を補い健脾し胃気を下降させることです。便通はどちらかというと軟便気味だと言います。胃気を下降させる薬には少し軟便にさせる薬も入っています。そのことを留意して服用していただきました。
◇1週間後に見えてゲップはいくぶん良いようだが軟便になる。そこで胃気上逆の理由を胃に湿気が溜まっているために脾気が疲れ気は滞り、ゲップや胸やけ、身体が重い、食べると眠くなるなどの症状が起こると考えました。脾気を補い、気をめぐらし、胃の水穀による湿気を乾かそうと試みました。心と小腸は臓腑の関係で表裏をなし、心の気は胃の部位の心下に現れます。心は神を蔵し精神的な負担は胃の症状として心下に現れます。心はまた血脈を主(つかさど)っていますから、心の血脈の流れを順調にし、三大栄養素の消化をはかって胃の負担を軽くしました。その処方により諸証は改善しました。

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